Lingerine ショップ&ブランド[ 摘出手術後編 ] ~乳がんを経験しても、おしゃれを諦めない~ 乳がん経験者が作った乳がん専門ランジェリーavoir(アボワール)代表 中村真由美さんに学ぶ 手術後・再建後のランジェリーの選び方
乳がんは、日本人女性がかかる割合(罹患率)ががんの中で最も高く、年々増加しています。毎年9万人以上が新たにかかるといわれており、生涯で乳がんにかかる割合は9人に1人となります。※1
血縁者が罹患している方もおられるでしょう。乳がん患者さんのうち、10~15%に家族歴があると言われています。決して他人事ではないのです。乳がん手術を受けた後、患者さんがぶつかる問題の1つとして、「どのようなブラをつけたら良いのだろう?」ということ。そして、「病気をする前につけていたような可愛いらしいランジェリーが無い」ということはメンタルにも影を落としてしまいます。
今回は、自身の乳がんサバイバー経験から「またきれいなランジェリーを身に着けたい。気持ちの上がるランジェリーを身につけたい。」という思いの元、乳がん専門のランジェリーブランドを立ち上げた中村真由美さんから、「どういった悩みを持つ患者さんが多いのか? その解決方法」「術後の経過別のブラジャーの選び方」等、非常に貴重な内容を教えていただきました。
※1 引用元:https://www.kinazu.jp/c/feature/about-inner(ピンクリボンフェスティバル)
― ブランド立ち上げの背景について教えてください。
私が、2011年に両乳房の乳がん手術をし、放射線治療を終えてブラジャーを買いに行ったとき、今からであれば40年前に祖母がつけていたようなブラジャーと同じようなカラー展開・デザインのものしかなかったんです。当時管理職をしていた私は「これでは仕事は頑張れない」と思いました。元々スーツの下はTシャツなどのピタっとしていたものを着ていたので・・・。そして日本中の乳がん専用ブラジャーを買いに行きました。どんどん商品は溜まっていきましたがどれも違うなと思いました。元々ランジェリーも大好きだったので綺麗なデザインがないことにとても悩みましたね。
乳がんを患ってからは患者会に入ったり、ピンクリボンの実行委員をしたり、色々なことをしました。自分もこれから先どうなるかわからない状態でしたが、他の患者さんたちと話しているとみんなもランジェリーのことで困っているんだということがわかり、「だったら、私がするしかないの?」と思い、全く未知であり知り合いもいないこの業界で手探りの中ランジェリー作りを始めました。
とある下着製造会社との出会いがあり話を聞いていただいた時、男性役員の方だったのですが「僕たちは下着を作っていながら、どうやって乳がん患者さんを助けてさしあげればよいのかわからない。なので、中村さんの言う通りまずは作ってみます。」と言っていただいたことから、会社を辞めてワンルームマンションを借り、初めは個人事業主として立上げました。
― 大変なご苦労あっての現在ですね。初めに作られたブラジャーはどういったものだったのでしょうか?
乳がん患者の皆さんに知っていただく方法もわからなかったので、女性の先生たちに相談をして、まずは前開きのブラジャーから変えていこうとなりました。ベージュと茶色しかなかったのでまずは柄を入れてみたり、ただ生地を変えて終わりではなく前開き部分に工夫をしたり、お得感を感じてもらえるように厚みのあるパッドを2枚入れたり…。誰しもがはじめて乳がんにかかるので戸惑います。術後落ち着くまではパッドを入れて使えるようにし、後々に経過に合わせて自分で切って調整しながら長く使えるようにしました。
― パッドは2枚組なのですね。実際の商品を拝見したいのですが・・・まずは術後すぐにおすすめのブラ、使い方を教えてください。
まずはこちらの前開きタイプのものが術後におすすめしているもので柄も花柄やボーダーをご用意しています。術後で手が上がらない状態でも着脱可能なようにボタンを4つ付けています。体調が悪くなったときは下のボタン2つまで外してもバストラインを保てるように柔らかいだけではなくハリ感のある素材にしています。
付け方については、ホームページの動画でもご説明していますが、健康な側の胸と高さ・重さを合わせることがポイントになります。
健康な側の胸(画像左)には重みがあるため楽なブラジャーでは下がって見えます。なので、手術した側の胸(画像右)には付属の厚いパッドを入れます。
画像出典:official HPの動画より
この時、パッドの向きは厚い方を上にします。普段は皆さん厚い方を下向きに付けているかと思いますが・・・パッドの向きによって胸の向きが変わります。健康な方の胸とバランスを合わせるためにはパッドの厚い方を上にしてください。
画像出典:official HPの動画より
画像出典:official HPの動画より
それでも手術した側の方の胸の方が上にボリュームがあるように見えるので、健康な側のお胸に、キャミソールやブラトップに入っている薄いパッドを入れて調整します。
画像出典:official HPの動画より
(下の画像のような)薄いパッドを入れることにより、乳輪乳頭が透けて見えるのも防ぎつつ形を左右そろえていけます。
画像出典:official HPの動画より
みなさん調整のためによくある薄いパッドを沢山入れるのですが、こちらの付属パッドはとても厚みがあるので何枚も入れる必要はないです。全摘の場合は、脇側のお肉からごっそり摘出するので、いくら薄いパッドを重ねてもきれいなボリュームが出ないのです。パッドを足すにしても脇側にもボリュームを足すという工夫も必要です。そういった付け方のご相談にもお答えしています。当時誰も教えてくれなかったので、私自身試行錯誤してパッドの入れ方を編み出していきました。
だんだん慣れてくると前開きブラを使わなくなってくるので、このパッドをハサミで丸く切って厚みのある部分を調整して、別のブラに入れていただいて再利用してもらいます。
術後は誰しもが初めてなので焦って乳がん専用ブラを買い集めたりするのですが、手術跡が落ち着き術後のテープが縮小していくこともあります。高いお金を払ったけれど結局は使えなかったということもあるので、焦って色々買い集めなくてもよいです。大体の術後ブラには「ペラペラのパッド」がついていますが、実際のところそれだけではどうしてよいかわからないんです。シリコンパッドを買ったりしてみても案外使うと痛かったりもします。なので、テープが取れるまでは様子を見られることを私はお勧めします。ただ、医師によっては事前に下着の用意をするように言われる方もいるため、あくまでも主治医の指示を優先していただいています。
― アボワールさんでは、試着の宅配サービスがあるとお伺いしました。
はい、送料無料で新品をお送りしております。自分のサイズはMだと思っていても、術後の痛さ、そして傷や痛みがどういうふうにブラジャーに当たるかもわからないです。ゆるめのサイズを購入しておいても実はブカブカだった…ということもあります。なので、試着サービスは是非お試しいただきたいです。自分の体と対話しないとわからないものです。
― とても素晴らしいサービス! そして、経験された方にしかわからないことばかりですね・・・。術後のお悩みで多いものについても教えてください。
「痛くても痺れていても着けられるブラジャー」を皆さん探されています。左右差の調整方法もわからないですし、ブラがずり上がったりすることも悩まれていますし、楽なブラをつけていることで健康な胸が下垂するのではないか? というお悩みも多いです。
どこのメーカーさんにもシリコンパッドはあるので皆さんとりあえずそれを入れているのですが、使い方は教えてもらえません。シリコンパッドと同じ胸の大きさの方はなかなかいないです・・・私が解決策としてお伝えしているのは、脇側にパッドを入れる方法、他のパッドも重ねる方法など、より自然に見える方法をお伝えしています。夏になるとストールなどで隠してらっしゃる方もいるのですが、「Tシャツを着ることが出来るよ!」というのが私たちの1つの大きな目標になっています。Tシャツ1枚でも自信を持って外を歩けるということが、術後の女性が自信を持って社会の中を動けるという目安になると思っているからです。
薄いブラジャーを試着してもらったときには、必ず上からキャミソール、Tシャツも試着してもらい、お客様に確認していただいています。
― このキャミソール、とても素敵なデザインですね! こちらも術後専用のお品なのでしょうか?
このキャミは健康な方もどなたでもお使いいただけますが、パッドの入り口を広くして中にシリコンパッドが入れられる作りになっていて、全摘の方も温存の方もつけられます。同じタイプの総レースブラジャーもあります。
術後の方も使えますし、下から履くことができるので、術後で手の上がらない方は下から履いてもらっています。裏地はコットン生地を使用して滑らかな肌当たりです。術後にはポートという体液を出す管をつけるのですが、その傷跡にも優しいです。
また、乳房再建手術後にティッシュエキスパンダーを入れて皮膚を伸ばしている間も着けることが出来ます。ストラップが太いタイプもあります。サイドから背中側まで一枚布のため、ずり上がらず安定したホールド感があります。ですから、大きい胸の方にずれたり、ブラジャーがずれ上ったりするのを抑えて1日キープしてくれるので、サイズ感さえ合えばとても楽ですよ。
― ずり上がらず留まってくれるのは助かりますね! パッドの重みで形崩れすることもなさそうですし、何よりとても可愛らしく、カラー展開もたくさんあって私たちも日常的に使うことができそうです。
― ホームページを拝見すると他にも色々とブラの種類があるようなのですが、見せていただけますか?
ノンワイヤーの「やわらかカップブラジャー」もあります。
こちらは一見、普通のブラジャーに見えますよね。でも私たちはカップ全面にたくさんのパッドを入れなくてはならず、市販のノンワイヤーブラではそれが出来ないんです。こちらのブラはシリコンパッドも入れられますし、パッドの重さが肩の負担にならないよう、そして「センチネル部分」(がんのリンパ転移が無いかどうかを確認するためのセンチネルリンパ節生検の箇所)への負担がかからないよう配慮した作りになっています。
また、再建手術でインプラントを入れた場合は、ワイヤー入りのブラですと、ワイヤー部分とシリコンの形が合わなくなってきたり隙間が出来てきたりして困ることがあります。このブラはノンワイヤーなのでシリコンの形に添っていってくれるので、再建手術後にもお使いいただけます。
患者さんの中には、退院した翌日からお仕事に出られる方も普通にいます。前開きブラから少しづつブラジャーも社会復帰していくんです。アピアランスケアともいわれるように「私は乳がんなんだ…」と思うより、綺麗なランジェリーを身に着けることで少しでもテンションを上げていっていただきたいです。
次回は後編として [ 再建手術後編 ] をお届けいたします。中村さん曰く、2013年に保険適用となってから再建手術を受けられる方が多くなったとのこと。しかし、2019年発がん性の認められたインプラントの回収があったこと、ここ数年はコロナ渦で救命救急が最優先だったことで再建手術が止められていたという経緯がありました。
現在は保険適用の幅も広がり再建手術を手掛ける医師の数も増えてきたとのこと。その分再建後に寄せられるランジェリーに関する相談も増えてきているそう。
再建後の美しいバストラインの作り方について次回さらに深くお聞きしていきます。
アボワール公式HPでは、健康な側のお胸の大きさや、傷に合わせたパットの入れ方も
わかりやすく解説されているので是非ご覧ください!
以下画像は一例です。
画像出典:avoir HP
パッドのセット方法については動画解説もありますので是非ご参考になさってください。
アボワールインターナショナル株式会社
直近のイベント情報
「下着相談会」開催
日程:2022年9月16日・17日
場所:乳腺専門クリニックマンマリア築地
ご予約方法や詳細はInstagramにてご案内中
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美容と健康に気を使っています。趣味は料理と読書です。でも、アクティブなことも結構好き。最近はマラソンを始めました!